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目標は立てない。

起業して、5~6年目でようやくわかってきたことを少し書こうと思います。

会社の運営の仕方がわからないときって、事業セミナーみたいなものに参加したり、本を読んだりして、なんとなく実践してみたりしますよね?
それで、「事業計画を立てる」ということをしたり、「PDCAサイクル」で検証したり、事業を発展させるために「○○戦略」を採用したりとかしてみるわけなのですが、これ、すべて、上手くいきませんでした。簡単に言うと、「数値目標をクリアーするために仕事をとってくる」というような状況に陥ってしまうんですね。そうすると、仕事の内容は納得できないものだったりするし、それが自身のストレスになるし、そうなれば、当然、組織の空気も悪くなる・・・

それで、あるとき、「目標は立てない。」と決めました。そうしたら、かえって、売上も良くなってきたんです。そこで気づいたのが、「そういえば、ああいう起業とか事業の本を書いたり、セミナーの講師をしている人って、みんな男性だな。やっぱり男女でアプローチの仕方が違うんだ。きっと・・・」ということでした。

なんとなく感じていたそれが、先日読んだ本『新しい時代のお金の教科書』(山口揚平 著)で、クリアーになりました。

「タテ」のマジョリティ、「ヨコ」のマイノリティという話があって、要するに「コモディティ(匿名の製品・サービス。例えばお金/票/エネルギー)」を提供するのがマジョリティ。その周辺に位置しているのがマイノリティ。緑とか花とか生活必需品ではないものを提供する弊社の仕事は、当然、マイノリティです。

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マジョリティの基本的な発想は、資源を吸い上げて、上からシャワーのように降らすことです。
これは出来上がったシステムなのであたりまえです。(引用)
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このタテのシステムの中に入り込んで、マイノリティの人達が事業をしていこうとしても、上手くいくはずが無いのでした。

この本の、「女が男より稼ぐ時代」という項にこんなことが書いてあります。

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資本主義社会とネットワーク社会についてまとめます。
  ご覧のとおり、「タテ」と「ヨコ」では何もかもが違うのです。
  「タテ」だった頃は円錐形だったものが、だんだんと円状に変化していきます。そして、ネットワーク社会ではハブ人材(インフルエンサー)が圧倒的な影響力を持つようになるのです。

 今、東京の中心ではお金を稼ぐことに関しては完全に女性のほうが上になっています。男性の稼ぎ方はタテ社会(支配と依存)×ロジックですが、女性はヨコ社会(憧れと共感)×感性です。タテ社会は崩壊しつつあり、ロジックはAIに負ける。したがって男子的能力では稼げない時代となっています。(引用)
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なるほど、すっきり。
ここ数年、私は、「(数値)目標を立てないことが目標としている」と言っているのですが、それで良かったのでした。

少しでも多くの人に、共感してもらったり、信頼してもらえることで、仕事が増えていく。その繰り返しで良いのだと実感している今日この頃です。

「緑化する上での基本作法」 ~ 「江東区緑化計画の手引き」から

各都道府県や市町村には、緑化を進めるための緑化条例や自然環境を守るための環境保全条例などが制定されています。都市部では特に、大規模な建築を行う際の緑化基準があり、「面積当たり〇本の樹木を植える」というようなことが決められています。
 
例えば東京都では、23区ごとにそれぞれ条例があって、それぞれの現場ごとに、緑化基準書を確認しながら植栽計画を立てていきます。なので私は、様々な自治体の緑化基準書を目にする機会が多いのですが、「こんな数量、将来のことを考えたら植えすぎなんじゃないか?」と感じるものがあったり、とにかく面積あたりの数量の換算方式だけが入念に書かれているだけのものが多かったりして、どちらかというと、その書類を読み込むのも面倒だし、その基準に沿って計画するのが不本意な気持ちになるものがあったりして、どちらかというと良くない印象があるんですね。おそらく、緑化計画に携わっている人の中でも、「面倒だな」と感じている方は多いのではないでしょうか?
 
今日、江東区のある物件の植栽計画を立てるにあたって、江東区の「緑化計画の手引き」を初めて読んだのですが、これが良かった!


 koutouku_2.jpg


開発する面積当たりの緑化面積や植栽本数の算出方法などが掲載されているのは、他の自治体と同様なのですが、「緑地をつくる意味」が、しっかりと書かれているんです。
 
例えば、「緑化デザインの実際.1」というページで、最初にうたわれているのが、「みどりの大切さ」で、
    みどりそのものの存在機能
    防災機能
    景観構成機能
    生物生息基盤機能
4項目が挙げられていて、それぞれの内容が、簡潔に説明されています。
 
通常、「みどりって大切なものですよね?それはわかりますよね?」という感じな、あいまいな表現が多い中、きっちり、端的に4項目を挙げて説明されているのが良いと思うし、「景観」のことや「生物生息基盤」のことについて触れられているのが良いと思います。

 

koutouku_1.jpg 


次に、「みどりを育てる基本」という項目があって、
「草も木も、植物は私たちヒトと同じ生き物です。緑化する上での基本作法として、生き物としての植物が将来にわたり、良好な生育ができるよう、以下に挙げるように十分な環境条件を整えて植栽してください。」
とあり、以下の5項目が挙げられています。
    緑化基盤作りと土壌改良が植栽の基本です
    植物生長に必要な環境条件を確保する
    その場所に適した種類を植える
    既存樹木を極力活かす
    植栽した後も愛情をもって適切なメンテナンスを行う
 
これ、本当に植栽をする際の基本中の基本なのですが、この「ヒトと同じ生き物」だということが、蔑ろにされてしまっている緑地が多いのも現実です。そんな中、自治体がこのようなわかりやすい言葉で設計者に伝えようとしていること、これは素晴らしいことだなと思います。
 
上記の5項目は、通常の個人邸など、どんな植栽計画にも共通な内容で、一般の方が読んでも、役に立ちます。
詳細部分については、
このリンクから確認してみてください。(12ページから15ページ)
 
この他にも、「バランスの取れた多層構造のみどりを育てる」とか、「多様な生態系を育むバランスのとれた緑をつくる」というようなことも、わかりやすく解説されています。
 
ただ、残念なのは、緑化計画書の審査基準には、土壌改良のことや、多様な品種を計画しているかどうかなどは、どうやら含まれていないみたいだということ。
 
例えば、土壌改良は、現場によっては、植物を植える費用よりもコストが掛かる場合もあるのに、目に見えない部分なので、コストカットの対象になりやすい部分であったりもします。こういう部分が、計画書や審査基準にしっかりと盛り込まれていると、現場でも軽視されにくい作業項目になるのに・・・
 
今後の変化に期待したいと思います!


6周年。

かつて、植物学者の田中修さんが、新聞のインタビュー欄でこんなことを話されていました。

「中国では一晩だけの楽しみならお酒を飲んでおいしいものを食べていればいい。10日間楽しみたかったら豚一頭を料理して仲間を集めて一緒に食べていればいい。一生楽しみたかったら庭師になれというそうです。植物の変化に日々発見があって楽しめるというわけです。」

まさにその通りで、庭師という仕事は、たとえ毎日同じ現場に入ったとしても、毎日違う発見があって飽きない。私は、2008年の秋頃に前の会社を独立し、それからしばらくは、ガーデンの手入れの仕事が面白くなってきた時期だったので、「このまま一生、ひとりの庭師としてやっていけたらいいな」と思っていました。

しかし、あることをきっかけに、なんとなくまわりに押し流されるような感じで、会社を設立することになりました。
株式会社○○という名前をつけ、自分が代表取締役になるというところまでは、書類を提出して、所定の費用を支払えば、誰でも簡単にできてしまうことです。しかし、株式会社を設立して、自分に「代表取締役」という肩書がついた途端、「理想的な会社って何だ?」・「どういう社長が良い社長なのか?」と考えはじめることになったんですね。不思議です。

そんなことを考え始めてから今まで、とにかくヒントを得ようと、色々な本を読んできました。

その中でも、設立の頃に読んで、「ウチもこんな会社にしたいな。」と共感したのが、『社員をサーフィンに行かせよう』でした。アウトドアブランドであるパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード氏が書いた本です。会社の運営のこと、広報のこと、人事のこと、直営店の建築のことなど、直接的にヒントになることがいっぱい詰まった会社づくりのスタンダードのような本だと思っています。役に立つことはたくさん書かれているのですが、大事だと思うことを、ひとつだけ。
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創業以来、ずっと企業の責任とは何かという課題と格闘してきた。ビジネスは実のところ誰に対して責任があるのかということに悩み、それが株主でも、顧客でも、あるいは社員でもないという結論にようやく達した。ビジネスは(地球)資源に対して責任がある。自然保護論者のディヴィッド・ブラウアーは『死んだ地球からはビジネスは生まれない』と言った。健康な地球がなければ、株主も、顧客も、社員も存在しない
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訳者あとがきの中で、訳者がイヴォン・シュイナード氏に直接インタビューした際に語られている言葉です。

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さて、造園業・ガーデニング業というものは、いわゆる「労働集約型」の仕事です。さらに、その職人のレベルによって仕事の完成度が変ってしまうということもある世界です。さらに、植木職人が一人前になるには、工場従事者や料理人などよりも、時間が掛かる。なぜなら、仕事の内容が、1年を通じてずっと同じではなく、季節によって違うし、年に1回しか経験できない作業や、時には、数年に1回しか経験できない仕事があったりするためです。

経営やら何やらいろいろなことを知り始めると、とにかく、この業界は「とても効率が悪い」ということがわかってくる。他の業種と同じように利益を出すのは、かなり難しい。では、どう考えれば良いのか?

昨年あたりから、なんとなく、「弊社は、こういう方針で行くんだな」というものは出来つつあったのですが、最終的に背中を押してくれたのが、最近読んだ、『レスポンシブル・カンパニー』でした。これも同じく、イヴォン・シュイナード氏と、ヴィンセント・スタンリー氏の共著となっています。

ここからの引用。
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数年前、ビル・マッキベンが工場式農業と低投入農業で生産性を比較し、おもしろい発見をしている。補助金が出る工場式農業のほうが単位面積あたりの収益性は高いが、低投入農業(有機農業とはかぎらない)のほうが食料の生産量は多いというのだ。工場式農業を使用と思えば、単純化して工業的処理ができるようにしなければならないし、機械化も進めなければならない。つまり、単品をずらっと一平方キロメートルくらい並べて栽培しなければならないし、収穫には高級スポーツカー、フェラーリが買えそうな値段の車が必要だし、燃料も大量に使う。
 これに対し、200メートル四方くらいの小さな農地しか持たない農家は、その土地について隅々まで熟知し、土地の生産性を限界まで引き出す必要がある。別の作物の陰に植えるといい作物があることを知る、根の長さが異なる作物を組み合わせて間作するといいことを知る、ミミズがたくさんいるかどうかを確認するなどのことをしなければならないのだ。一方の農法は土地を疲弊させるが、もう一方は、地力を活用し、自然の一部となる。
 短期的に見ても長期的に見ても、大規模な工場式農業より小規模な低投入農業のほうが事業の健全性が高いと言える。20世紀は合理化を大規模化の時代であり、その時代に育った我々にとって、これは信じがたい結論かもしれない。だが、我々事業者が自分も自然の一部であると考え、現場を歩いて考えなければいけない時代になったのだと思う。資源を使い果たすようなやり方ではなく、もっと生産力を活性化し、集約的なやり方にしなければならない。そのようにやり方を変え、人の住める世界を後生に残さなければならない。
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ここで言われている「低投入農業」を、「オーガニックなガーデニング業」と読み替えてみれば良い。
 従来の価値観で見ると、一見、効率が悪いように見えるが、実は、生産性が高いということ。そのためには、ここに書かれているように、様々な知恵や知識も必要だし、今のままではなく、もっと効率的にコトを進めていかなければいけない。
 
簡単ではないけれども、それが理に適っている。簡単ではないけれど、でも、なんだか出来るんじゃないかなという気がしてきている今日この頃です。





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小島 理恵

Author:小島 理恵
GARDENER Q-GARDEN代表取締役
All About 「家庭菜園」ガイド
町田ひろ子インテリアアコーディネーターアカデミー 講師

庭のプランニング・施工・ケアまで一貫して手がけている。四季を通じて植物を楽しむことができるオーガニックな空間づくりが特徴。

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