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自分で育てた植物にはストーリーがある

お正月に、『2025年の建築「新しいシゴト」』(企画・監修 HEAD研究会 フロンティアTF)という本を読みました。

「大学で建築を学んだけれど、実は、大学で教えられていた現実と違う。けれど、どうやって仕事をしていくか?」という話や、「未来の工務店のすがた」など、建築に少しでもまつわる仕事をしている人にとっては、とても興味深い本で、「未来の工務店のすがた」の章は、個人的にとても勇気をもらえる内容でした。

今回は、その話とは関係のない部分で、ハッとさせられた一節を。

「都市生活の中で自ずと外注体質、分業体質が染み付いていたようで、野菜は自分でつくったほうがおいしいなんていう意見も、プロがつくったもののほうがおいしいに決まっているよ、その思い込みが気持ち悪いんだよ、と思っていました。」
これは、二地域居住(平日は東京、休日は千葉県南房総市の里山)を実践されている、馬場未織さんというライターの方のセリフです。そして、こう続きます。
「しかし、食事のおいしさは「総合体験」なのだと今ははっきりいえます。自分がつくった作物にはストーリーがあり、食事とはストーリーを食べることなんです。」

えー、そうなのか!

野菜を実際に育てたことがない人は、「野菜はプロがつくったものの方がおいしいに決まっている」って思っているんだ!
と、初めて気づかされました。これまで、完全にやっている側の思い込みで発信してしまっていたなと・・・でも、実際に体験すると、こういう風に変わるんだなということも、よくわかりました。「食事とはストーリーを食べることである」と。

改めて考えてみると、花もそうだし、庭全体も同じだと言えますよね。お客様のお宅に手入れに伺うと、「できた当初は、こうだったわよね」、「今年はこういう風に変えてみたの」、「来年は、ここをもう少しこうしてみたいな」、「あと何年かしたら、こういう風になると良いな」と、無意識に必ずその歴史を語り合っているし、「この苗は○○さんにいただいたの」、「このバラは、○○年にガーデニングショーに○○さんと一緒に行ったときに買ったものなのよ」と、一つ一つの植物にストーリーがある。私は毎日、そういうことに慣れきってしまっていて、まったく特別なことだと思わなくなってしまっていました。でも、改めて、「そこが自分で植物を育てることの良さなんだ」ということに気付いたというわけです。

英国では、ガーデンデザインは「総合芸術」だと言われることもありますが、こういう、ひとりひとりの体験や思い出の部分も含めての芸術なんだなあと。「これまで、何年この仕事やっているんだ!?」「今更?」と言われてしまいそうで、ちょっと恥ずかしいのではありますが、あえて書いてみました。

2025年の建築「新しいシゴト」2025年の建築「新しいシゴト」
(2014/12/16)
青木純、明石卓巳、いしまるあきこ、伊藤菜衣子、伊藤洋志、加藤渓一、木下斉、河野直、島崎賢史郎、嶋田洋平、島原万丈、ナカムラケンタ、馬場正尊、馬場未織、林厚見、迎川利夫

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プロフィール

小島 理恵

Author:小島 理恵
GARDENER Q-GARDEN代表取締役
All About 「家庭菜園」ガイド
町田ひろ子インテリアアコーディネーターアカデミー 講師

庭のプランニング・施工・ケアまで一貫して手がけている。四季を通じて植物を楽しむことができるオーガニックな空間づくりが特徴。

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