F様邸(国立市)
汚れて黒ずんで見えたコンクリートの床に、バルコニー用のタイルを敷き詰め、成城のT様邸でも使用した、レチューザというプランターを並べた空間。チョコレート色のプランターに、ポイントでレッドを混ぜたのは、F様のアイディア。このプランターの発色の美しさが活かされ、大成功!当初イメージしていた、イタリア温室のような、明るく、モダンな空間に生まれ変わった。
植物は、もともとお持ちであったオリーブに合わせて、レモンやキンカン、ハーブ類などをミックスして植栽。大株に育ったイングリッシュラベンダーが咲きはじめたら、「一層、華やかな空間になりそう」と、F様は今から楽しみなご様子だった。
さて、こちらが、木製プランターで構成したメインの空間。
「とにかく、実のなる木を植えてほしい」とのご要望にこたえて、アンズ・ブルーベリー・プルーンなどの木を植栽。打ち合わせをしていくなかで、斑入りの葉をコレクションされていたこともあるとのお話を伺い、下草類は、葉の色や模様が美しい宿根草を中心にアレンジした。
このプランターのデザインが生まれたきっかけは、1本のブドウ。もともとF様がお持ちだったブドウの木を、どこにどう植えるか?というのが、ここのプランをするうえで、最大の難題であったのだ。ブドウは、ツル植物なので、どこかに絡ませなければいけない。しかし、マンションのバルコニーなので、風が強く、アーチやスクリーンのようなものを作っても倒れてしまう。でも、床に固定することはできない・・・
ということで考えたのが、これ。背の高いプランターに、鍛鉄性のフレームを挿す方式。移植されたブドウも問題なく育ち、いくつか実をつけていた。
このプランターに合わせて、他のプランターとベンチを組み合わせ、全体のデザインが決まった。ベンチは、趣味で陶芸もなさるF様の、作品を置くスペースとしても使えそうな形を考えたのだが、結果的には、人間が座るスペースとして、毎日利用されていると聞き、とてもうれしくなる。
このプランターとベンチには、軽くて水に強い青森ヒバを使用。プランターとして使用するにはもったいないほどの最高級のヒバを、惜しげもなく使って、いつも丁寧な仕事をしてくださる青森の家具工房に作成していただいた。
実際、このベンチはすごく気持ちが良くて、ここに座るたびに、「ウチにもこのベンチ欲しいな~」と口走ってしまうほど・・・
「木のベンチは、他の材質のものよりも長い時間座っていられるわね。」そして、「これからの季節はビールが楽しみ」と、F様。
普段、外で使うイスやテーブルをしまっておくと、外で過ごそうとするときに出してくることが億劫で、友達が来るとか、なにか特別なことがないと、外で過ごす機会がなくなってしまう。しかし、ベンチやイスを常設しておくと、外で過ごす時間が増える。これは、自分自身の経験から実感していること。
だから、ガーデンをデザインする際には、イスという形に限らず、気軽に座れるスペースをつくることを心がけている。
ガーデンに毎日出ていきたくなるきっかけを、ついでにもうひとつ。それは、おいしい実のなる木が生えていることや、毎日の変化が楽しい植物が生えていることなど・・・
F様が、毎日の植物の変化を、ひとつひとつ本当に楽しそうに語って下さって、「せっかくつくるなら、毎日外に出ていきなくなるようなガーデンに」と、心掛けている私にとって、とても嬉しいひと時だった。