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自給自足の人は強い!

地震の関係で、納期が遅れてしまっていた現場に、レイズドベッドを納品に行く。これは、車椅子の方でもガーデニングが楽しめるプランターで、既成品には、なかなか楽しいデザインのものが無いので、オリジナルのデザインを依頼されたもの。(詳細は、納品した施設のオープンに合わせて、発表しますので、もうしばらくお待ちください。)製作を依頼していた木工屋さんに、「今回は、色々とトラブルがあって、大変でしたよね」と言ったら、「俺らのこんなトラブル、トラブルのうちに入らないよね・・・」と言われ、「そうですよね」と同意する。

大地震が起こってから1週間あまり。計画停電など、関東地方でも浮足立った1週間だった。
先日思ったことをひとつ・・・

最近、一緒に仕事をすることが多くなった大学の先輩が、福島県の白河に住んでいる。地震の翌日、ニュースのテロップで、「白河地方の集落が土砂崩れで埋まる、生き埋めの人がいる可能性も」というものを目にし、しばらく呆然としてしまったものの、夕方には「元気だぞ~!」というメールをもらい、ものすごく安心した。
12日の夕方にもらったメールは、

「皆様ご心配かけております。電話、メールともここに来て繋がりにくくなっている。皆元気・水も温水器も復活し、風呂に入ったぜ!」

というもの。カッコイイ!
その後もメールでのやりとりは平常どおりできるようになっており、私が計画停電やガソリン不足のことをつい、グチッてしまったら、「そちらも大変だな~」と逆に気づかわれてしまった。面目ない・・・

この先輩の暮らしは、普段から、暖房は薪ストーブなので、灯油は関係なく、水道は、おそらく集落の水道なので、自分たちで改修できるものなのではないかと推測する。食料も、それなりのストックがあるのだろうし、野菜なども、自分や近所の農家さんのつくっているものがあるだろうから、それほど困らないはず・・・ガソリン不足や放射能汚染など、困っていることもたくさんあるとは思うが、最低限の暮らしはできているようである。

こういうときって、「普段から、自給自足に近い生活をしている人が強い」ということをつくづく実感した。私たちのような都市生活者は、エネルギーから食料にいたる、何から何までお金で手に入れる生活になってしまっている。ただ、いくらお金があっても、その商品がなければどうにもならないので、そこに不安感が殺到してしまって、現在のちょっと異常というか、不安定な状態になってしまっているのではないだろうか?

私自身、月曜日の仕事帰りにスーパーに寄り、ほとんどの棚に何もなくなっているのを見て、「それでもあるものの中から何か買っておくべきなのか?」「いらないものは、やはり買わないでおくべきなのか?」と、うまく判断がつかなくなってしまっていた。でも、翌朝、自宅のベランダのプランターに青菜が育っているのを見て、「野菜はこれで数日何とかなるか!」と、「いらないものまで余分に買わなくていいんだ!」という安心感を得た気がする。

「これからは皆が自給自足を」などと言う気は全くないが、ほんの少しでも食べ物を自分で育てているだけで、こういうときの精神安定剤にはなるということを実感した。

これからは、本気で地産地消を。

14日・15日は、予定通り現場へ植栽作業に行ってきた。

ガーデンのリニューアル工事を行っていた個人邸の現場での、最後の仕上げ作業。幸い、レンガ積みの花壇には地震の影響もなく、また、植物や土壌改良材等の材料は地震前に現場に搬入されていたので、いつも通り、土壌改良をし、植物を配置し、植えていくだけ。計画停電が行われていたようだが、電気は使わないので関係ない。私鉄とJRの2路線が交差する駅からほど近い丘の上のお宅なので、いつもは駅のアナウンスや電車の音が聞こえてくるのだが、電車が止まってしまっているため、とても静か。鳥の鳴き声と、私たちの話声しか聞こえない中、淡々と作業をすすめる。

こんな風に、目の前にこなすべき仕事があり、それを進めることができるという環境をとても幸福に思う。もし、仕事がストップしてしまって家にいることになってしまっていたら、TVやインターネットの情報をずっと見続けていたことだろう。そして、そのあまりの情報に足も心もすくんでしまい、私はきっと、何もすることができなくなってしまっていたことだろうと思う。静かな中で、一日中土をいじり、植物を植えているだけ … 特にこの2日間は、そういうふうに過ごすことができて、本当に良かった。

休憩時間に、職人さんと、「これから、すぐにでも自分の庭で野菜を植えたほうがいいよ」とか、「これまで、いかにエネルギーを無駄に使っていたか」という話になった。

野菜を例に取ってみると、普通に季節の野菜を食べているのであれば、北海道や九州からわざわざ運んでくる必要はないし、その分、エネルギーを無駄に使っているわけだし、今回のように交通事情が混乱するだけで、食べたいものが手に入らなくなってしまうことにはならないはず。「旬のもの、なるべく地元で採れたものを食べる方が体に良い」という、当たり前のことが「健康法」のように、わざわざ言われていたことの方が、ちょっとおかしかったのだ。

植物材料に関しても、現在、道路の事情で、市場に入荷しなくなってきてしまっているものが多数出てきている。それによって、実は、私の仕事にも影響は出てはいる。

でも、3月から、夏の花であるペチュニアが出荷されていたり、9月で、まだまだ暑さが残っているのに、シクラメンが出荷されていたり、日本全国の生産者から東京に、季節をまたいでいつでも同じような状態の植物が入荷してくるという状態の方が、ちょっとおかしかったのだ。「それが仕事だから」と、自分はそれに気づかないふりをしていただけなのだ。例えば、この季節に、ハウスで熱をかけて開花させたサフィニアを買ってきて、屋外で育てたとしても、気温が低すぎてうまく育たないし、遅霜に当たってしまえば、傷んでしまう。でも、他の業者さんよりもより早く出荷すれば、高い値段がついたりしやすいという事情があったりして、そういうふうに生産している業者さんがいて、それを、高値で仕入れる小売業者さんがいて、それを買う消費者がいた。市場で、そんな季節外れの草花を見るたびにいつも、少しイヤな気分になっていた私。だいいち、ガーデンに季節感がなくなってしまうじゃないかと思う。でも、そう思っていただけで何もしていなかったし、ときどき、そんな材料を使ったりもしていた。

また、大きな植木に関しては、これから植える環境と、近い環境のところで育ったものの方が、断然、活着率(植え付けてから正常に根が働き、生育していく確率)が高くなる。また、移動時間が少ない方が、当然、植木にかかるストレスも少なくて済むので良いとされている。

これからは、植木も野菜も地産地消を!種類が多岐にわたる植物だって、うまくネットワークしていけば、近隣の地域でまかなっていけるはず … 時間はかかるかもしれないけれど、きっと。

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大震災の前日、たまたま訪れた北佐久郡御代田町のお寺。
春の暖かさが感じられる横浜から、車で3時間半の距離で、これだけ気候が違うのだ …

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「うつくしく暮らす」ことを考える

大地震のニュースを見て呆然としていたときを過ぎ、地震で本棚から崩れ落ちてきた本を、売るものと売らないものに分けて整理する。大津波ですべてのものがさらわれてしまった映像を見た後では、今まで「いる」と思い込んでいたものの半分くらいが「いらない」ものであることに気づく。

売る本の箱に入れようとしていた一冊の本に、付箋が付いていることに気づき、読み返してみる。

「地方の価値は、本来の風土や地勢の保全からしか生まれない。都会が持たないものは、それしかないからである。舗装道路など最低限のインフラ(社会基盤)があり、光ファイバーを敷設すれば、業種によっては企業の移転も可能であるし、職住近接の豊かな地方生活はけっして夢ではない。そのとき初めて地方という壮大な付加価値が誕生するのである。
 会社の窓を開けたら鳥の声が聞こえ、自転車で森を通って家に帰るような生活。自宅の庭で菜園を作り、子どもが川で遊ぶような生活、というだけでは足りない。今日的な意味で〈うつくしく暮らす〉価値観や理想を、地方が自ら示してみせなければならない。
 二十世紀的な消費生活と早晩決別しなければ、経済も資源も環境も立ち行かないのは明らかな今日、地方の価値とは余計なものを作らないことである。ただの〈自然いっぱい〉でなく、〈うつくしい地方〉を積極的に演出することで、きわめて二十一世紀的な価値の創出は可能なはずである。」
高村薫の『作家的時評集2000-2007』の中の一節。『信濃毎日新聞』の2002年4月29日の朝刊に掲載されたものである。

2002年より以前から、このようなことを提言する人はたくさんいたはずなのに、とくに省みられることなく、日本全体が、惰性でここまで来てしまったという事実がある。先日訪れた信州でも、年々活気が失われてきていることが目に見えて明らかだし、そこに住む人々も、その事実に手をこまねいているだけのような印象を受けた。

地震のある日本では、形のあるものは、一瞬にして失われてしまう可能性があるという事実を目の当たりにした私たちは、これから、豊かさの価値観が、物質的なものから、そうでないものにシフトしていく可能性を感じる。

本当に、〈うつくしく暮らす〉とはどういうことか?自分にとって本当に価値のあるものとは?そんなことを、それぞれの人が考えるようになるのではないだろうか?そこに希望の光を見出したいと思う。

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恩師のパーティーの翌日、3月6日に松本駅から見た、懐かしい北アルプスの山並み。常念岳が春風に煙っている ・・・ 駅前(バスターミナル側と反対側=いわば裏側)の街並みは、相変わらずというか ・・・

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プロフィール

小島 理恵

Author:小島 理恵
GARDENER Q-GARDEN代表取締役
All About 「家庭菜園」ガイド
町田ひろ子インテリアアコーディネーターアカデミー 講師

庭のプランニング・施工・ケアまで一貫して手がけている。四季を通じて植物を楽しむことができるオーガニックな空間づくりが特徴。

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